【知識】冬場の運転のリスクって何?4WDでもそれだけじゃダメ?

みなさんは車の冬装備ってしていますか?
そもそも車の冬装備というと何を思い浮かべるでしょうか?
まず一番に浮かぶのはスタッドレスタイヤかなと思いますが、けっこう高かったり、季節ごとのめんどくさかったりしますよね。
他にもうちの車は4WDだから冬でも安心!と思っている人もいるかもしれませんが、実は4WDでも得意なことと不得意なことがあります。
今回は各冬装備の特性をしっかりと理解して目的にあった冬装備ができるようになっていただければと思います。
この記事はどんな人向け?
・4WDだからノーマルでもなんとかなるでしょ!と思っている人
・ノーマルタイヤで雪山に行ってしまおうかと思っている人
・スタッドレスタイヤを買おうか迷っている人/必要性が分からない人
・とりあえずスタッドレスタイヤ履いてるから大丈夫でしょ!という人
目次
最初にいきなり結論
かなり説明が長くなるので、先に結論を明記しておきます。
- 「走り出せない」、「止まれない」、「曲がれない」のすべてのリスクに対する万能な対策はタイヤと路面の間のグリップを上げること。
- グリップを上げるには①スタッドレスタイヤ②チェーン③オートソック④スプレーチェーンがあり、順に性能・耐久性が下がっていく。
- 4WDは「走り出す能力」は高いが、「止まる能力」や「曲がる能力」は変わらない(むしろ重い分止まらないし、4WDの特性上曲がりにい)。
それではいろいろと説明させてください。
冬場の運転のリスクって?
まず冬場の運転のリスクですが、現象としては簡潔に言うと3つです。
- 走り出せない(走り出しづらい)
- 止まれない(止まりづらい)
- 曲がれない(曲がりづらい)
どれも、車としての機能の根幹にかかわる部分であるため、無対策での冬場の運転のリスクがいかに高いかわかります。
これらのリスクを適切な対策を以って低減していかなければなりません。

現象と原因
1. 走り出せない
この走り出せないというのはいわゆるスタックという状態です。
スタックとはいわゆる立ち往生、動けなくなってしまうことですので、まさにこの走り出せないという状態に当たります。
雪山や街中で車がスタックしてしまうと、当然後ろは大渋滞になることは想像に難くなく大ひんしゅくを買いますし、何より自分が目的地にたどり着くことができません。
JAFに入っていればしばらく待てば救援が来てくれるとは思いますが、基本的にはいかなる場合でもこのスタックは何としても避けたい事態です。
スタックをしてしまう理由は、ざっくりと大きく分けて2つ、スリップと空転があります。
①スリップ
ここではタイヤが路面についているが滑ってしまう現象のことを指します。
実際によく起こるのは路面凍結時の登り坂です。
冬の山や街中などで路面が凍っていると、本当に意外なほど緩い坂でもスリップして登れなくなってしまいます。
これは氷の上でツルツルしてしまう状態なので容易にイメージが付くと思います。
一言でいうと、路面が凍ることでタイヤと路面の間のグリップ(摩擦力)が下がってしまうことが原因ですので、なぜグリップが下がるのか、という観点でグリップを上げる対策を考えることが重要です。
後述ですが、駆動方式と関係があります。
②空転
これはタイヤ(駆動輪)が地面につかず空回ってしまう現象のことを指します。
要は駆動輪が減ってしまい、駆動力を伝えるタイヤが減ってしまうことが原因です。
例えば、冬なら高く積もった雪への乗り上げが考えられますが、要は乗り上げてタイヤが浮いてしまっていることが原因なので、基本的には乗り上げないようにするか、乗り上げても動けるようにするかの2択しかありません。
こちらも駆動方式が関係してきます。
2. 止まれない
これは地面が滑りすぎて止まれない、止まりづらくなるという現象で、制動距離が伸びると表現されたりもします。
要はいつもと同じ位置でブレーキを踏むと思ったところで止まれないということなので、車としてはかなり致命的な状態になります。
発生するのはツルツルに凍った凍結路や融けかけたシャバシャバの雪道などです。
凍結路は普通に滑るだけなのでイメージしやすいですが、融けかけたシャバ雪の道はブレーキをかけても路面の雪が崩れて雪ごと前にグズグズと滑ってしまうイメージです。
いずれにしてもタイヤが地面についたまま滑るという意味では上述のスリップと同じですが、実は駆動方式は関係ないということが違いです。
つまり根本的にはタイヤと地面のグリップを上げることが対策となります。
3. 曲がれない
車が走り出すときや止まるときはタイヤのグリップを前後方向に使っているのでイメージしやすいですが、車が曲がるときというのはハンドルを切るとともに、タイヤのグリップを横方向に使っています。
つまり、タイヤと路面の間のグリップが下がると、止まれないと同時に曲がれないという現象が起こります。
ハンドルを切っても曲がらない、いわゆるアンダーステアという状態です。
つまり同じ速度で同じだけハンドルを切っていても、対向車線にはみ出てしまう危険性があります。
また、止まれないときと同じようにシャバ雪の路面が崩れることでも曲がりづらくなります。
車の曲がりやすさというのはそもそも駆動方式と関係があり、FFや4WDはアンダーステア傾向(曲がりにくい傾向)、FRはオーバーステア傾向(曲がりやすい傾向)ですが、各駆動方式内での曲がれない対策としては駆動方式によらず同じで基本的にはタイヤと路面の間のグリップを上げる必要があります。
現象と原因のまとめ
以上をまとめると下表のようになると思います。

つまり、安直な対策としては
- 共通の対策:グリップの向上
- 「走り出せない」への対策:駆動輪の増加
- 「止まれない・曲がれない」への対策:雪路面を崩れにくくする
となりますが、次に具体的な対策を見ていきます。

具体的な対策
1. グリップの向上
いずれのリスクにも効果のあるグリップの向上対策はいわゆる冬装備として多くの人がとるもので具体的には以下があります。
- スタッドレスタイヤ
- チェーン
- オートソック
- スプレーチェーン
主にこの4つが冬装備として有効な対策になると思いますが、しっかりと対策するならスタッドレスタイヤを履くかチェーンをつけるかになると思います。
①スタッドレスタイヤ
タイヤのサイズにもよりますが、スタッドレスタイヤはこの中で一番コストがかかりますが、一番効果があるものです。
駆動方式による使い方の違いはなく、基本的に4輪すべてに装着して使います。
走り出し、停止、曲がり、のすべてに効果があります。
スタッドレスタイヤは各社で使われている技術が違いますが、非常におおざっぱには使用するゴムを柔らかくしたりパターンを細かくすることで路面への食いつき(グリップ)を良くして摩擦力を向上させるというものです。
ブリヂストン社のものだとプラス発泡ゴムという微細な穴が開いているゴムになっていて氷の上の水膜を除去して滑りにくくする効果もあるようです。
メリットは
- 通常路の走行もできるため、シーズン開始時に付け替えれば、残りのシーズン中はつけっぱなしでいい
- 性能は3シーズンは安定して持続する
デメリットは
- タイヤの履き替えが手間
- コストが高い
- 夏はスタッドレス、冬はサマータイヤの置き場が必要なこと
このように一長一短ではありますが、雪国在住だったり、ウインタースポーツをやる人は必須のものとなります。
また、東京など首都圏に在住の人も年に一度ぐらいは雪が降る年が多いと思います。
そのときに車が使い物にならなくなってしまうのを避けるためにも、通勤などで定常的に車を使っている人は安いブランドのものでもいいので、用意しておくことを強くオススメします。
置き場については最近はタイヤ量販店で有料預かりサービスを行っているので、利用してみるのも手だと思います。
また、このようにスタッドレスタイヤネットで買うと安く購入ができますが、買うだけでなく持って行って装着しなければいけないのが手間です。
下記リンクで探すと近くの店舗にタイヤを直接届けて装着しに行くだけという流れになるため、幾分楽なので検討してみてはいかがでしょうか。
車種から選ぶこともできるため便利です。
②チェーン
チェーンは材質が金属製のものや樹脂製のものなどありますが、いずれも物理的な凹凸をつけることでタイヤと路面の間のグリップを上げるものです。
駆動方式によって使い方が違い、駆動輪に装着して使います。
つまりFFの車では前輪、FRの車では後輪です。
4WDは厳密には前輪と後輪どちらが主要な駆動軸になっているかという配分がありますが、基本的にはエンジンが前積みで前輪に荷重がかかりやすいこともあり、4WDでも前輪につける車両が多いと思います。
不明な場合は、ディーラーの人に確認してみてください。
基本的には走り出し、停止、曲がり、のすべてに効果がありますが、特に走り出しで効果が大きいです。
- メリット:登り坂ではスタッドレスタイヤ以上のパフォーマンスを発揮
- デメリット:乗り心地の悪さ、使用都度の装着・脱着の手間
高速道路など通常路でつけっぱなしというわけにはいかないですが、急登坂ではスタッドレスが登れないような勾配も登ることができる場合があります。
理想的には定常的にスタッドレスを履いておいて、いざというはにチェーンをプラスするというのが最も良いです。
が、よほどの急勾配であったり、車が異常に重いなどでなければ、スタッドレスで事足りる場合が多いです。
③オートソック・スプレーチェーン
オートソックやスプレーチェーンはなじみのない人も多いかもしれませんが、基本的には緊急対策用で一時的な使い捨ての対策と思ってください。
- メリット:手軽に使うことができる
- デメリット:性能・耐久性が低い
いずれもオススメできないのは、やはり性能・耐久性が低いという点につきます。
命を乗せるものという意味では頼りなさすぎるかなと思います。
オートソックは布製のチェーンともいえるもので、通常のチェーンと同じで駆動輪につけて使います。
装着は手軽で走行時の乗り心地も通常のチェーンよりはいいですが、耐久性としては100~200kmほどしか走れず、速度も50km/hを超えると消耗が激しくなるという特徴があります。
いずれにしてもチェーンと同じでシーズンを通して装着し続ける類のものではないため、使うたびに装着・脱着は必須となります。
スプレーチェーンは要はベタベタしたものをタイヤに吹き付け、乾燥後に細かい突起状となり、グリップを上げるというものです。
基本的には駆動輪にはつけるものとされていますが、個人的には4輪すべてにつけたほうがよいと思います。
ただ、4輪つける目的は主にブレーキ用途ですが、ブレーキ時に強くこすれた部分は一発で剥がれてしまいますので、やはり駆動輪だけでいいのかもしれません。
70kmほどは効果が持続して走行できるという話もありますが、いかんせんスプレータイプのため、基本的には走れば走るほど取れていくものであり、あまりオススメできません。
ゆっくりと走行し、走り出しのトラクションを確保する目的であれば、緊急時には使えるかもという感じですね。
スタッドレスに履き替える前に雪道に遭遇してしまったときなどは1本乗せておくと安心かもしれません。
駆動輪の増加
駆動輪はFFなら前輪の2つ、FRなら後輪の2つなので、駆動を4輪に増やすには4WDにする=車を買い替えるしかない(さらに言うとデフロック付きが好ましい)わけですが、要は駆動を路面に伝えればいいので、その意味ではいくつか対策があります。
いずれの方法も乗り上げて完全に浮いてしまっている場合には厳しいので、牽引など救援を要請してください。
①バスタオルなどを挟む
これはタイヤの浮いてしまっている部分にバスタオルを挟み込んで駆動力を得るという方法で一番お手軽なやり方です。
そこだけオートソックを履かせるというような状態に似ているかもしれません。
バスタオルでなくても使い捨ての車を拭くウエスなどが乗っている人は使えると思いますが、厚手のものが好ましいですね。
間に挟めるものであれば、板でもなんでも構いませんが、硬いものだと車重に耐え切れず割れる可能性があるので、そういう意味では布が意外と役立ちます。
②雪を踏み固める・押し込む
原始的な方法ですが、少し雪だまりにはまってしまったぐらいであれば抜け出せる可能性があります。
思いっきり高速で空転させると少し下に残っていた雪も吹き飛ばしてしまうので、ゆっくり前後に往復して雪を踏み固めることでタイヤが噛む可能性があります。
まわりに雪があるようであれば、どんどん拾ってきて⇒押し込んで⇒踏み固めてを繰り返すとより効果的だと思います。
雪路面を崩れにくくする
始めに言ってしまいますが、これは不可能です。
走っている車から路面に働きかけることはどう考えても難しすぎます。
なので、対策としては非常に微妙ですが、轍(わだち)を走ることです。
轍とは車が走った跡が路面に残った溝のことです。
あまりに溝が深い場合は逆にハンドルを取られる危険性もあるのですが、シャバ雪路面の場合は、轍の部分は少しでも踏み固められている可能性ありだったり、雪自体が浅かったりする可能性ありなので、どちらかといえば轍を走ったほうがよいかなと思います。
いずれにしてもそのような路面のときは徐行運転をすることは大前提でお願いします。
対策のまとめ
以上の対策をまとめると下表のようになります。

- グリップの向上としての足回りの対策は全てに効果あり
- 4WDであるからと言ってブレーキ性能は向上しない
- 4WDは駆動方式に特製としてはむしろ曲がりにくい
対策としてはおそらく読んでいる皆様も想定するいわば普通のものだったと思いますが、4WDは万能ではないということはしっかり認識しておいてほしいと思います。
このようにそれぞれの対策の特徴をしっかりと理解して、どのリスクにどの対策をするかを把握しておくようにしてください。

参考動画:JAFのユーザーテスト
最後にJAFの参考動画をいくつか紹介します。
非常に有益な動画で、各対策が各リスクに対してどれぐらい効果があるかを分かりやすく比較しています。
僕がつらつら説明してきたことが視覚的に確認できると思います。
もちろん数字の絶対値は車両や条件によって変わりますが、大まかな傾向やイメージはつかめると思います。
おわりに
今回は冬の運転のリスクと対策について紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
性能は走り出し、止まり、曲がりといろいろある中、安直にはスタッドレスタイヤやチェーンをつければよいのですが、安全に走るためには車やタイヤの特性を把握したうえで雪道を走ることが大事です。
毎年スタックしてしまう車というのはいろいろなところで見受けられますので、みなさんもしっかりと知識を身につけて自分の身は自分で守れるようにしましょう!

アイキャッチ画像は Photo by Daniel Foster on Unsplash