【ノウハウ】【ギア】登山における三種の神器の1つザックの選び方!
みなさんは登山用のザックは持っていますか?
登山における三種の神器と言われるだけあって、山を登る人ならだいたい持っていると思うのですが、大体の人が元からなにがしかのリュックを持っているので、それを代用していて意外と専用のザックを持っていないまま山に登っている人もいます。
荷物が入りさえすれば、 物理的にはどんなザックでも目的地まで荷物を持って行けるのですが、どんなザックを選ぶのかによってまったく携行性が変わってきます。
むしろ同じ重量なのにここまで違うの!?と驚かされますので、ぜひ今回の記事で知識を付けて背負い比べをしてもらえたらと思います。
この記事はどんな人向け?
・初めてザックを買おうとしている人
・買ってはみたけどいまいちフィットしない人
目次
なぜ専用のザックが必要か?
なぜ専用のザックが必要かと問われれば、「楽に多くの荷物を目的地に運ぶため」です。
極端な話、登山に必要な荷物をスーツケースに詰めることは物理的に可能だと思います。
ただ、それを山頂まで運ぶとなると持ちづらすぎますね。
では、スーツケースに背負う用のショルダーベルトがついていたらどうでしょう?
とりあえず運びやすくはなりましたが、中身が取り出しづらいですね。
このようにして登山用に何が必要か?どうしたら楽か?を突きつめて作られたのが登山用のザックです。
旅行用のスーツケースは登山には適しませんが、むしろ登山用のザックは旅行にも適しており、よく外国人の人などが登山用のザックで旅行しているのを見かけると思います。
求められる性能
求められる性能は何かですが、ざっくりいうと、
- 充分な容量
- 運びやすさ
- 取り出しやすさ
の3つにまとめられると思います。
が、この運びやすさや取り出しやすさは非常に奥が深く、いろいろな要素を含んでいるので以下で詳細に説明したいと思います。
充分な容量
充分な容量があるというのはザックとしては本当に最低限の性能ですが、用途に応じて調整するのが意外と難しいものでもあります。
だいたい目安としては以下のような感じです。
- 日帰り登山:20~30Lぐらい
- 2~3泊までの小屋泊orテント泊:30~40Lぐらい
- それ以上の連泊での縦走:それ以上(50L以上)
日帰り登山となるともはや20Lもいらないかもしれませんが、コンプレッションベルトでザックをつぶして調整すればちょうどよくなると思います。
僕は日帰り用に小さいものを分けて持つのが嫌だったので、日帰り登山~テント泊ぐらいまでをカバーするために38Lのザックを持っています。
テント泊で1泊ぐらいだと余裕ですが、連泊となってくると食糧や飲料次第でけっこうキツくなってくるかなという印象です。
なので、それ以上が必要になったら50~60Lを探そうと思います。
そんな日は来るのかは分かりませんが…。
またこの容量でもう1つ注意したいのが、メーカーの公称値が意外とあてにならないということです。
例えば、同じ40LというザックであってもA社のものとB社のもので容量が全く同じと言うわけではありません。
後述のようにトップローディングorパネルローディングであったり、アタッチメントによる拡張性が各々のザックで異なりそれによって容量も変わってくるため、どの時点での容量を公称値としているのかが違うのだと思います。
さすがにアタッチメントをフルで使った状態を容量としているメーカーはないと思いますが、少なくとも各メーカーで並べてみて、目で分かるほどあからさまに容量が違っていないかぐらいは確認する必要があると思います。
必要に応じて入れたい荷物を実際に持って行ってパッキングしてみるというのも失敗しないためにはいいと思います。
店員さんもザックを選ぶ重要性を重々把握しているはずなので、嫌な顔はしないと思います。
むしろじっくり選ぶのに非協力的な店舗はやめたほうがいいかもしれませんね…。
もちろん汚れたギアを持って行かないなどの配慮は常識の範囲でお願いします。
運びやすさと取り出しやすさ
運びやすさというのはいろいろな要素が関わってきますが、おおざっぱには
- 重心が背中に近くにあること
- 体にしっかりフィットしていて荷重を分散できていること
が重要になります。
重心が背中に近いというのは歩いたときに、遠心力が働きづらいということです。
わずかな遠心力の違いでも何万歩も歩いていると大きな違いになってきます。
この点では後述のパネルローディングタイプのものよりもトップローディングタイプの方が有利ですが、パッキング(ザックの中への荷物の入れ方)も非常に重要になってきます。
パッキングについては実際にしている記事があるのでよろしければご参照ください。
荷重の分散は主に肩と腰でしますが、これについては後述の「フィッティングの良さ」の項で詳しく説明します。
トップローディング or パネルローディング
ザックにはトップローディングタイプとパネルローディングタイプと言うものがあります。
このタイプは運びやすさにも取り出しやすさにも関わってきます。
一般的にトップローディングタイプのザックは縦長な形状をしており、重心が背中に近いため運びやすさに優れます。
また、ファスナー開閉でない代わりに雨蓋(トップリッド)がついており、雨蓋による収納性や荷物を挟んだりの拡張性が高いのがメリットです。
一方で、荷物を縦長に詰んでいくので奥の荷物が取り出しにくいのがデメリットです。
パネルローディングタイプはイメージするバックパックの形をしたもので、ファスナーで開けるタイプのものです。
ガバっと全体を開くことができるので奥の荷物へのアクセスはいいですが、一方でそのファスナーが壊れやすかったり、トップローディングよりは重心が背中から離れやすい(膨らんだ形の)モデルのものが多いです。
一長一短なわけですが、軽量な日帰り登山ならパネルローディングの方が便利で、荷物が重いときはトップローディングの方が便利かなと思います。
気室数とサイドアクセス
気室数とサイドアクセスはいずれも取り出しやすさに関わる項目です。
気室というのは聞きなれないかもしれませんが、これはザックの中の空間がいくつに分けられているかです。
雨蓋や前面のメッシュポケットなどは通常数えず、メインの部分がいくつに分かれているかを表します。
メイン部に特に仕切りがなければ1気室、仕切りが1つあれば2気室となります。
2気室のものは2つ目の気室にアクセスしやすいように別のファスナーなどが付いている場合がほとんどですが、これによりパッキングが非常に楽になります。
パッキングの難しさは重心の調節と取り出しやすさの両立だと思いますが、気室が分かれていて口が2つ付いているということは、それだけで取り出しやすさが大幅に向上し、重心の調節だけに集中できます。
それによりパッキングが上達しないと言う人もいますが、そのザックを使う分にはあまり関係のないことなので、上達のことは1気室のザックを使うことになったときに考えればいいかなと思っています。
サイドアクセスも目的としては同じで、要は下の方にアクセスしやすいように側面にファスナーが付いているもののことです。
サイドアクセスは1気室に付いているものも2気室に付いているものもあります。
この2気室化とサイドアクセスの良いところは、上述のトップローディングタイプの取り出しにくいという欠点を補うことができるところです。
フィッティングの良さ
フィッティングの良さは単純に自分の体のサイズに合っていることの他に荷重を肩と腰で分散できているか、というのが重要なファクターになり、運びやすさに大きく関わってきます。
見るべき項目は主に背面長とベルト・ストラップかなと思うので説明します。
・背面長
背面長とは読んで字のごとく背中の長さのことです。
ザックでいうと背中に接する部分の長さのことを言います。
この長さが自分の背中にあっているかつなるべく背中の全面に均等に荷重がかかったほうがいいですが、どこかに偏っているとその分そこで多く荷重を背負うことになるのでそこだけに負担がかかっていきます。
これは常に同じところを攻撃されるようなものなので、長時間の登山となるとキツいものです。
そのため自分の背面長にあったザックを選ぶことが重要になります。
なんですが、長さが数値上あっているものを選ぶというよりは、背負ってみて1番負担が少ないと感じるものを選んだほうがいいと思います。
長さ以外にも湾曲とか幅といったファクターもありますし、キツいかキツくないかは数字じゃなくて自分の感覚が決めるものですからね。
できれば重りも入れてみて背負ってみるといいと思います。
・ベルト・ストラップ
肩で背負う部分をショルダーベルト、腰に巻くのがウエストベルトもしくはヒップベルトと言います。
また、調整用の細いベルトをストラップといい、ショルダーストラップに加え、胸の前にチェストストラップや荷室が余っているときに潰す用のコンプレッションストラップ(ベルトとも言います)があります。
名前はベルトでもストラップでもいいんですが、大事なのは
- これらを締めたときに体にフィットするか
- 荷重が腰と肩で分散できているか
です。
まずフィットするかですが、特に海外メーカーのものだと小柄な日本人の体には合わないものもあったりして、限界まで締め切ってもまだ緩いと言う場合があります。
そのため必ず背負ってみて自分の体のサイズに合っているかを確認してください。
また同時に、閉めてみて痛くないか各ベルトのクッション性も確かめましょう。
次にその状態で少し荷物を揺らしたりしてみて、腰・肩・背中などのどこかばかりが重くなっていないかを確認してみてください。
どんなに長さを調整してもどこかに偏る場合は、残念ながらそのザックはあなたには合っていないと言えると思いますので、別の合うものを探しましょう。
とはいえ、ある程度は妥協を必要とする難しい作業ですので、1番納得できるものを選ぶぐらいの気持ちでいいと思います。
・アタッチメント
これは外側についているたくさんのベルトやらヒモやらゴムやらのことで、運びやすさや取り出しやすさに関わってきます。
要はそれらを使って外側に物をつけられると言うことです。
例えばマットをつけたり、トレッキングポールを付けたり、一時的にアウターやインサレーションを挟んだりというのが一般的です。
カラビナでマグカップやシェラカップをぶら下げている人もいますね。
また、雨蓋はアウターやインサレーションを挟むこともできるため、アタッチメントの役割も果たします。
このように使い方がわかってくるといろいろ付けられて便利ですが、あんまりブラブラしていると引っ掛けて落としたりするので程々にしたほうがいいかとは思います。
+α:ハイドレーション
これは専用のウォーターパックに長いチューブをつなぐことで、ザックを下ろさずに水を飲むことができるシステムのことです。
登山のときは想像している以上にこまめに水分補給が必要となってきますが、都度下ろして水分を補給するのは手間でもあります。
また、斜面が急な場合は下ろすと危険なこともあるため水分補給できないこともあります。
そういうときに役立つハイドレーションシステムですが、パック型なのでザックに専用の収納スペースがないと破れる恐れがあります。
なので、使いたい人はザックに収納スペースがあるほうが好ましいです。
ただ、使用後の洗浄が面倒だからかそんなに使っている人を見かけませんし、僕自身も使っていません。
トレイルランニングの人は必須かもしれませんが、そうでない人はお好みに応じてでいいかなと思い、+αとしています。
で、どうやって選ぶ?
三種の神器はどれも奥が深すぎて情報過多になってしまいますが、知りたいのは「で、どうやって選ぶ?」だと思います。
あくまで初めて選ぶ人への僕のオススメですが、
- トップローディングで40Lぐらい
- 2気室orサイドアクセスつき
- フィットするもの
を満たすものです。
トップローディングの40Lは日帰りにはややオーバースペックですが、コンプレッションがあれば大で小を兼ねられます。
絶対に日帰りしかしないという人はそれより小型でもいいかもしれません。
また、2気室orサイドアクセスはパーツが増えるので基本的に軽量性とは背反するのですが、初めはそんなことより使いやすさの方が大事だと思います。
そして最後のフィットするものというのが難しいですが、こればかりはいろいろ背負い比べてみるしかありません。
オススメモデル
そんないろいろ満たす都合のいいザックなんかあるの?という感じですが、それは体型によるのでなんとも言えないところです。
が、一応汎用性が高い日帰り~テント泊までぐらいの容量で2つだけ選んでみたいと思います。
Osprey kestrel 38
僕が1番オススメするのはこのケストレル38です。
このザックは必要な機能が網羅されていて、なおかつ初心者の人でも使いやすい配慮がなされています。
事実僕はこれを使い続けていますが、今のザックがダメになってもまたこれを買うかもしれません。
- トップローディング38L
- 2気室、サイドアクセス付き
- 豊富なアタッチメント
- レインカバー付き
- ハイドレーション収納可
- 背面長の調整可
と押さえたいところがほぼ網羅されています。
買い換えるにしてもここが基準点になるかなという教科書みたいなモデルです。
強いて難点を挙げるなら、
- ウエストベルトのポケットが使いづらい
- ウエストベルトのクッションにもう少しだけ厚みが欲しい
- 自立しづらい
ぐらいです。
ただ、これだけオススメできるのも体にフィットしてこそなので、そこだけは各自確認してください。
詳しくは別記事を書いているのでご覧ください。
deuter Futura Pro 36
ケストレル38を買うときに最後まで迷ったのがこのフューチュラプロ36でした。
当時はそこまで明確な基準があって選んでいたわけではありませんでしたが、背面が蒸れにくそうなものを探していてこの2つに絞ったような気がします。
背面の蒸れなさは半端なく、素材からしてそもそもあまり濡れなそうな感じです。
ただ、背中のメッシュと荷室がアーチを描くように離れており、その分中の容量が減ってしまうのが難点です。
今思えばもっと大事なところもあるんですが、結果オーライと言うやつです。
最終的に決め手になったのは機能と言うよりは背負ったときのフィット感だったので、合う人には非常にオススメできるザックです。
- トップローディング36L
- 2気室、両側サイドアクセス
- レインカバー付き
- ハイドレーション収納可
- ウエストベルトのクッションが厚めでよい
と押さえたい所は概ね入っていますが、背面長の調整ができないというのが背負う人を選ぶ最大の所以です。
また、アタッチメントが豊富についていないことも今あらためて見てみるとマイナスポイントかなと思います。
フィッティングがうまく行くならエアコンフォートシステムと呼ばれる背面メッシュは快適と評価が高いので選んでみても良いと思います。
おわりに
三種の神器シリーズをまた長々と紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
ザックは本当に奥が深く、また各メーカーの企業努力が詰め込まれているので、本当に迷います。
自分の求める完璧に出会うことはなかなか難しく、もし出会えたならそれは非常に幸運であると言えます。
いずれにしても、実際に見て、触って、背負って確かめることが大事だと思います。
みなさんが納得のいくザックに出会えることを願っています!
他の三種の神器についてはこちらの記事をご覧ください。
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